拍手と鈴

 



  神社への参拝は、まず手水舎で手と口を清めてから拝殿前に進み、鈴を鳴らしてお賽銭を投げ入れた後,2拝2拍手1拝(拝とは深い礼のこと)の拝礼をするというのが正しい参拝の仕方です。(神社によっては拍手の回数が違う神社もあります)これは皆さんも十分ご存知のことと思います。では、鈴を鳴らしたり拍手をする意味についてはどうでしょう。

 古代の人々は、空中には目に見えない多くの精霊がいると考えていました。手を打ったり鈴を鳴らすことにより空気が揺れてバイブレーションが起き、精霊が刺激されて目の前に現れ、自分の魂を伝えることが可能になると思っていたのです。バイブレーションにより集まってきた精霊は自分の霊魂を高め、また刺激することで神の力が目覚めていく。

 拍手は神話の中にも描かれています。天照大神が天の岩戸にお隠れになった時、天宇受売命(あめのうずめのみこと)は、岩戸の前に集まった神々の前で、激しく桶を踏み鳴らしながら肌もあらわに踊り狂うと、神々は歓声をあげ大騒ぎとなり、その騒ぎが気になって岩戸から外を覗いた天照大神を、天手力男命(たじからおのみこと)が引き出したという物語。この中で、歓声をあげながら神々は拍手をするのです。その拍手は踊りに対する拍手でもあり、天照大神が岩戸からお出になるのを期待した拍手でもあります。そして、拍手をすることにより神は現れるのです。
 神社の鈴も、その清らかな音色で神様をお招きする合図と言え、巫女が舞うときに手にもって鳴らす神楽鈴も神様をお呼びする役割を持っています。

 鈴には、古来より魔よけの霊力もあるとされていました。神社で授与される御守には鈴の付いたものもありますし、干支の土鈴や厄除けの土鈴もあります。平安時代には、妖怪や怨霊が家の中に侵入するのを防ぐために、軒先に風鈴を吊るしたそうです。風水においても、鈴は重要なアイテムになっています。風通しが悪く気がよどんでいる部屋を、鈴を鳴らすことによって浄化させたり、その年の五黄土星が回る方位の部屋に、金属の風鈴を吊るして化殺したりします。

 また、拍手には別の意味もあります。「魏志倭人伝」には古代日本人の風習として貴人に対して手を打ったことが記されており、古代には人に対しても拍手をしていたことがわかります。神社で拍手をするのも、きっと神様を敬う気持ちの表れなので しょう。

 また、視点を変えると、家においての『気の滞り』も拍手や鈴で清めることが出来ます。神社では『家祓い』といって、実際にお宅に伺って家の中をお祓いすることも多いのですが、ご依頼なさる方はやはり何らかの体の不調や、怪我や事故にあったり、最近悪いことが続くなどの理由から、神社にお祓いを依頼なさるようです。お祓いは、まず家の中の適したところに祭壇を設け(神棚があればその前で)、お酒やお米・塩・野菜・果物等をお供えし、各部屋をお祓いしてから祝詞を奏上し、玄関を切麻でお清めし、玉串を奉奠していただくというものです。

 式後は家の中はすっかり清め祓われ、御依頼主様の気持ちもスッキリした様子が、こちらにも伝わるようです。

 さて、せっかく家祓いによって清め上げられた家が、その後も清められた状態が長く維持されるよう、御依頼主様には次のことをお勧めしています。それは家庭でも出来る音霊による清め、つまり『拍手と鈴』による清めです。清め方は簡単で、家の中の各部屋を拍手して回り、可能であれば鈴(ベル)を鳴らして回るというものです。 拍手の回数に決まりはなく、神社参拝と同じように2拍手でも良いと思います。また、鈴(ベル)は金属製ならどんなものでも良く、鳴らし方にも特定の決まりはないようです。ご自分が気に入った形や音色のものが良いでしょう。もちろん毎日お清めしてもかまいませんし、週1・月1でも良いと思います。まずは、すぐ出来る拍手でのお清めから始めて下さい。その後、鈴(ベル)のお清めも付け加えると良いでしょう。家の中の運気が滞ってきたと感じたら、拍手や鈴(ベル)でお清めしてください。

 一日中まったく太陽の当たらない部屋や、風通しの悪い部屋、窓のないトイレなど、特に陰気な感じを受ける場所は入念にお清めすると良いと思います。また、部屋の四隅は特に気が滞る場所ですから、四隅を清めるのも良いでしょう。毎年6月と12月に神社で行われる大祓いでは、ある意味、我々人間に溜まる半年分の穢れを祓うのですから、家の穢れも音霊で清めることも大切なのではないでしょうか。 




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