言霊と祝詞


 今、世間ではアメリカの新しい大統領、バラク・オバマ氏の就任演説や選挙演説における『言葉の力』について注目が集まっています。

 その言葉に込められた強烈なメッセージがアメリカ国民の心に響き、オバマ氏を黒人初のアメリカ合衆国大統領に押し上げ、彼が放つ「yes we can]「change」は、我々日本人の耳にも心地よくそして頼もしく聞こえてしまいます。

 さて、古来より言葉には霊が宿ると言われてきました。神道では全てのものに霊があるとされ、木には木の神、火には火の神がいると信じられており、当然ながら言葉には言葉の神霊、つまり言霊(ことだま)が存在すると信じられてきたのです。

 言霊はその力によって人の幸・不幸を左右するとされ、古代の人たちは言葉に願いを込めて発することで、その願いが実現すると考え、言葉に対する崇敬の気持ちを持っていました。

 万葉集にも日本を『言霊のたすくる国』『言霊のさきはふ国』と詠ばれています。『言霊のさきはふ』というのは、言葉が相手の心を動かし、清め高め、感動させる力を持っていることを言います。

 では、最高に良い言葉とは何でしょうか? 無数の言葉の中で、古代の人たちが残した最高の言葉は、神に関する信仰を伝える言葉、つまり祝詞です。祝詞は神社で祭礼やご祈祷の時にご神前で神職が奏上するもので、文字通り神を祝福する言葉で、神に感謝し、ほめたたえて、さらなる幸運をもたらしてくれるように祈願するものです。

 祝詞の起源は天岩戸神話にまでさかのぼります。天岩戸の前で天児屋根命(あめのこやねのみこと)がお隠れになった天照大神が岩戸から出てくるように、その偉大さと美しさを褒め称え、太祝詞を唱えたのが最初とされ、天児屋根命は祝詞の神・言霊の神とされています。祝詞は神の言葉、神に通じる言葉であり、神を賛美する言葉で埋まっています。我々神職は、神様と皆様との間を取り持つ仲取り持ちとして、皆様に代わって祝詞を奏上しています。皆様の意を神に伝え、そして神の恵みが現れて皆様が幸せになっていく。これが神の道とも言えるのです。




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